People In The Box「Tabula RaSa」水戸公演が凄すぎた
※ツアーのネタバレが入ってます。
4日前。というか、その前の日に俺は氷結を飲んでて喉までキンキンに冷えてやがるぜってどこかの鼻が高いギャンブラーと同じセリフを吐いてた時にTwitterを眺めてたらニュースが入ってきた。People In The Boxがニューアルバム「Tabula Rasa」をリリースする、と。なるほど今度水戸に来るあのツアーはリリースツアーだったのか。全く面白い事してくれたもんだ。新譜はライブ会場限定販売。しかもストリーミングで9月4日から配信スタート。Apple Musicここで出番だ。サブスク課金してない連中は当日新曲を全く聴かずにその日を迎えることだろうがそんなに我慢できるのか。俺には良い音楽がもう世の中に流れてるのに我慢なんて到底できないよ。でも俺なんかPeople In The Boxの秋のツアーのタイトルが既に「Tabula Rasa」だったからコレもしかしたら新譜のタイトルなんじゃね?だとしたらep?なんかこういうの付けそうじゃん。こういうタイトルあってもおかしくないじゃん。まあいいけど、つまりはアルバム聴いて良かったらツアーに行けってことだよな把握。正直急にアルバムをリリースする事自体は何も驚きは無い。数年前だったら驚いてただろうが、2年くらい前にサニーデイ・サービスがストリーミング限定で20曲以上入ったアルバムをなんの告知もなく急にリリースしたっていう例があったから。もう曲というのはアーティストの思いのままにすぐ発表できてしまう。ストリーミングだとそれができてしまう。新しいよな、本当。これが時代ってやつだ。
退勤後、いざ視聴。全8曲。1曲目から8曲目まであっという間に聴き終えた。なんて贅沢なんだろう。どの曲も濃密で、どの曲も一筋縄にいかなくて、どの曲も変で、どの曲も読めない。jpopとか聴いててよくあるのが、次こういう展開になるんだろうなって予想しながら聴いてて予想通りの展開になったらその曲はその程度というか、リスナーをワクワクさせたり驚かせたり感動させたり常に音楽ってそうなきゃいけないと思うんだけど予想通りに曲が展開されていったら萎えるんだよね。つまんない。だけどピープルって常に面白いのよ。変拍子とかいう物凄くレベルの高い音楽やってる時点で只者じゃないし。あと根がラッパーというか新作もだいぶ韻を踏んでいるというかそんな歌詞どうやったら思いつくんだっていう。前の「Kodomo Rengou」ってアルバムでも「無限会社」って曲に度肝を抜かれたっけ。だって「箱いっぱいのキャンディ」と「サルヴァドール・ダリ」で韻踏んじゃうんだよ?そんなんできる?そんなん思いつく?100回生まれ変わってもそのフレーズ、そのリズム、そのメロディ、頭ん中で生まれやしねーよ。
つまりPeople In The Boxは聴く度にワクワクするんだよ。鍵盤でしっとり聴かせる曲もあれば、「無限会社」みたいなロックンロールもある。そしてPeople In The Boxを全く知らない人に説明する時によく俺が使う言葉は「偏差値が高い」ということ。それは前述の通りである。
さて、新譜「Tabula Rasa」を一通り聴き終えた俺はコンビニに行ってツアーチケットを買うのであった。水戸はツアー2日目、しかも休日、水戸でのライブも4年ぶり、全くタイミングが良すぎるよ。見逃すわけねーよ。
しかしここまで語っておきながらPeople In The Boxのライブは今年のTOMOEで初めてみたばかりで実際俺は新参リスナーなのだ。昔のGhost Appleとか全然分かんないし、なんか21曲で1トラックとかいう頭のおかしいアルバムがあることも知っているが聴いたことは無い。ただ今回は「Tabula Rasa」のリリースツアー。新譜なら全曲好きだからノー問題。
暗転。偏差値の高い方々が拍手で迎えられ定位置に着く。漂う知性。歓声は上がらない。手も上がらない。SEがピタリと止み、鍵盤の音が場を一瞬で変えた。ワンマンツアー「Tabula Rasa」が始まった。
1曲目は「装置」、静寂を切り裂くギターの音が緊張感を更に引き立てる。ライブは新譜を中心の演目。ただ旧作からもバランスよくチョイス。「木漏れ日、果物、機関車」「聖者たち」が聴けたのが良かった。
客は常にじっと聴く。ただただステージ上にいる3人をただただずっと観る。これがPeople In The Boxのライブか、と。多分大人しいといってしまえば簡単なんだろうが、歓声も全く上がらない所は異様といえば異様だった。ただTHE NOVEMBERSのライブを初めて観た時もそうだったが、なんであんなにステージ上でギラギラのロックンロールをやってんのに観客は答えないのだろうかとずっとライブ映像とか観てて疑問に思ってたけど、これはライブを観て分かったんだけど目の前であまりにもレベルの高い事、そして真っ黒であの轟音をぶちかましてるのでただ圧倒されてしまうんだ。THE NOVEMBERSが好きな友達は「あれは音にぶん殴られる感覚だ」って言ってた。きっとPeople In The Boxもそうなんだろうな。勿論彼らが持っている世界観も含めてだが、目の前であれだけレベルの高い事をやられると何もできないなって。全身で音を浴びる、というか。口をあんぐり開けてしまう。あんな感覚本当に久々だったな。
でもMCは演奏時とは真逆で和やかな雰囲気。さっきの緊張感がこんなにも緩和するのかと。しかもアルカラかってくらいの長尺MCだ。グッズ紹介、声を100通り変えることができる変声機器?を使ってたが何言ってるか途中本当に分からなかった。
その長尺MCの後に何度も聴いたあのイントロ。「無限会社」をやってくれた。そして「かみさま」がトドメを刺して、ラストは「懐胎した犬のブルース」で締めくくった。
アンコール。正真正銘ラストナンバーは「ヨーロッパ」だった。これも途中から全く違う曲に変わり、ポエトリーリーディングをぶちかまして最後は怒涛のロックンロールをお見舞いする。
これがPeople In The Boxか。なんて破天荒で刺激的で美しいんだ。そして「Tabula Rasa」はマストで聴くべき1枚だ。こんな音楽をずっと聴いていきたいんだよ。
One Man Tour2019「Tabula Rasa」
装置
いきている
木漏れ日、果物、機関車
風景を一瞬で変える方法
忘れる音楽
泥棒
まなざし
ブリキの夜明け
聖者たち
2121
八月
もう大丈夫
無限会社
ミネルヴァ
かみさま
懐胎した犬のブルース
ENCORE
ベルリン
ヨーロッパ